原文
うつくしきもの
瓜に書きたるちごの顏。雀の子のねず鳴きするにをどりくる。
二つ三つばかりなるちごの、いそぎて這ひくる道に、
いと小さき塵のありけるを目ざとに見つけて、
いとをかしげなる指にとらへて、大人などに見せたる、いとうつくし。
頭は尼そぎなるちごの、目に髮のおほへるを、かきはやらで、
うちかたぶきて、物など見たるも、うつくし。
現代語訳
かわいらしいもの。
ウリに描いた子どもの顔。雀の子が、ネズミの鳴きまねををして呼ぶと
踊るようにやってくる様子。
二つか三つの幼児が、急いで這ってくる途中に、とても小さなごみが
あったのをめざとく見つけて、愛らしい指でつまんで、
大人たち一人ひとりに見せているしぐさがかわいらしい。
あまそぎ(おかっぱ頭)の幼女が、目に前髪がかかるのをかき払わ
ないでちょっと頭を傾けてものを見たりしているしぐさもかわいらしい。
重要語句
うつくしき→かわいらしい
尼そぎ→髪をかたのあたりで切りそろえること