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保護猫しいたけのお話

僕の名前はしいたけ。

生まれてすぐに里子に出された。たぶん捨てられたのだろう。

たくさんいた兄弟は順番に引き取られていった。そして最後にふたりが残った。僕らはいつも一緒に遊んでいた。

そんなある日、ある人間と出会った。そして可愛く振る舞ってメロメロにしてやった。そしたらこの人間は僕らふたりを一緒に家へ連れて帰ってくれた。

僕らふたりはすぐにこの人間と仲良くなった。僕らはこの人間を飼い主と認めてやった。

飼い主は僕がお兄ちゃんだと言った。そしてもうひとりを弟だと言った。真相はわからない。僕の名前はしいたけで弟の名前はしめじとなった。ふたりともキノコの名前だ。ふざけている。でもみんな可愛い名前だって言ってくれた。別に名前は関係なかった。飼い主が一生懸命に名前を呼んでも反応はしてあげなかった。

でも「ごはん」という魔法の言葉には反応をした。これが聞こえると食事が出てきた。弟は食いしん坊だったから「ごはん」と話せるようになって食事を催促できるようになった。だから僕も真似をしたけど、弟ほど上手には言えなかった。

飼い主が外から帰ってくると僕はいつも出迎えた。飼い主が他の部屋へ移動するといつも一緒に移動した。夜は一緒に寝た。

そんなある日、白くて大きくてウザい奴がやってきた。犬という生き物らしい。こいつは”心臓が悪く売れない”という理由で里子に出されたらしい。でも本当に心臓が悪いのか?というくらい元気だった。本当はウザいから売れないのではないかと思った。僕たち兄弟はこの犬と一緒にいたくなかった。飼い主は僕らのものだったのに、だんだんこの犬に独占されるようになっていった。僕はこいつが大嫌いだった。

飼い主は僕らと犬を仲良くさせようとした。別にこの犬と仲良くはしたくなかったが、飼い主と一緒にいたかったから少しずつ距離を縮めてやった。そして犬は思ったより嫌なやつじゃないと気づいた。

冬は一緒に寝ると暖かかった。犬がウザ絡みをすると、弟が猫パンチで教育をした。犬は僕たちの方が上だと思っていたらしい。飼い主がお風呂に入っていると僕たちは順番に並んで水を飲みにいった。犬はいつも一番最後に飲んだ。

そんなある日、僕はご飯を食べられなくなった。弱っていく僕を飼い主は近くで見守った。犬も近くで見ていた。弟は時々来るだけでそっけなかった。でも僕はそれがよかった。だから飼い主と犬から隠れた。そしたら少しずつ飼い主と犬も僕をそっとしておいてくれるようになった。でも最後に少しだけ犬にお別れの挨拶をしてやった。そして僕は息を引き取った。

犬も弟も僕がいなくなって寂しそうにしている。犬は僕がいた場所の匂いを嗅いでいるし、弟は珍しくあまり食欲がない。

そして、飼い主はボロボロ泣いている。泣いていいのだ。小さな人間の子供は辛い時に思いきり泣くが、泣き止むと辛かったことを忘れてしまう。辛い感情を抑えてしまうとそれが蓄積されていつまでも辛いのだ。時には病気になってしまうこともある。大人になると辛い時に泣くのが下手になる。

そして覚えておくといい。辛い感情はいつまでも続かないから。

こんな辛い思いをするくらいならもう猫を飼わないなんて言うな!(飼うのなら保護猫がオススメだぞ)僕は辛い思いの何万倍も飼い主に幸せを与えたんだから。そしてその幸せな記憶だけがいつまでも心の中に残っていくから。

あとは僕に感謝をしろ。「ありがとう」って言葉を繰り返すのだ。そしたらだんだん元気になる。それが僕の望みだ。幸せだったよ。ありがと。バイバイニャ



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